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お知らせ

機械工学科・樋口グループのAI班が取り組んだ『深層学習による音響データの利用技術』の卒業研修テーマを紹介します!!

2024.05.06

 2年生になると全員が受講できる「卒業研修」について紹介します。今回は、機械工学科の樋口 善彦 教授のグループの活動です。今話題のAIの一つの技術である深層学習を機械工学分野へ応用することに挑戦しています。深層学習と言えば、画像解析や物体検出が定番です。しかしこの研究室では、音響データを使って深層学習するAIを開発して、「ガス攪拌の流量判定」と「溶接板の良否判定」を対象にその性能を評価しています。

-AIを活用する水中におけるガス攪拌の流量判定技術の開発

 一つ目のガス攪拌(かくはん)とは、液体に混ぜものを入れて、それが均一になるように液体にガスを吹き込み、ガス気泡が浮上する力で混合を促進する操作のことです。この撹拌の強さは主にガス流量で決まるため、通常は配管の途中に流量計を設置して管理しています。ところが、流量計を通過した後でガスが漏れたりすると、設定よりも少ないガス流量で撹拌しているので、成分や温度が思ったほど均一にならないトラブルが起こるリスクがあります。

 「ガス攪拌」の際に気泡の破裂音がガス流量で変わるという仮説を立て、この破裂音(音響データ)をもとに深層学習(ディープラーニング)でガス流量を判定するという手法を検討することにしました。深層学習のモデルは、いくつかの畳み込み操作とプーリング操作を組合せてからソフトマックス関数で流量を決定するというものです。図1は、ガス攪拌の際の動画です。途中から、ガス流量を徐々に増やすことで音が変化していることがわかります。人間の耳では、ガス流量が「少ない」「多い」の2段階程度しか識別できませんでしたが、今回のモデルでは、7段階の識別が90%以上の精度で可能になりました。成果は、日本実験力学会 2023年度年次講演会と日本鉄鋼協会2023年秋季講演大会で発表することができました(図2・発表の様子はコチラ➡記事1記事2)。

図1 ガス吹込みを上から撮影した様子
ぜひ音をきいてみてください

20230830HP_trimming.jpg

図2 学会発表での記念写真

-AIを活用する金属溶接部の良否判定技術の開発

 もう一つの「溶接板の良否判定や材料の空洞欠陥検出」は、「ガス攪拌」で開発したこの深層学習モデルを打音検査に応用したものです。溶接した鉄板の良・不良を判定したり、材料内部の空洞欠陥を検出する方法の一つに打音検査があります。これは、X線などを使った特別な方法ではない、現場で設備の不具合を検出できる方法です。通常の打音検査は、ベテランの検査員の方が打診棒で叩いたときの音で判定するのですが、経験を積んだ検査員を確保するのが難しいなどの課題があります。そこで、打音検査の音響データを使って深層学習を行い、溶接の良否をAIに判定させてみることにしました。溶接材料は学生自身が作成しました。学生の約半数は溶接が初めてで、おっかなびっくりで始まりましたが、最後には立派な溶接板ができあがりました(図3・図4)。不良な溶接板の判定は改善の余地がありましたが、正常な溶接板は97%の精度で判定できました。また、空洞欠陥の精度も直径3.0mm以下の空洞なら80%以上の精度で判定することができました。どちらも、まだまだ改善の余地はありますが、音響データを深層学習で判定するというテーマの第一歩はクリアできたと言えます。

welding_7people.jpg

図3 溶接板をもって記念撮影

welding_plate.jpg

図4 できあがった突合せ溶接板

 指導教官の樋口先生は、「AIはこれから更に発展していくので、機械工学に役に立つAIをこれからたくさん開発したい」と力強く語ってくれました。ちなみに樋口研究室では、学生さんが主役である大学生活を少しでも楽しんでほしいと食事会やクリスマス会などを催しているとのことです(図5)。

研究室でピザ、ケーキ食べる_pressed.jpg

図5 樋口研究室の食事会の様子


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